公開日 2026年10月06日
「インタビューを頼まれたけれど、うまく話せる気がしない」。テレビや雑誌で見る受け答えはどれも滑らかで、同じように話さなければと身構えてしまう方が多いはずです。
しかし、インタビューで求められているのは、整った答えではありません。字遊堂はこれまで、採用サイトや社史の制作で多くの方にお話を伺ってきました。取材の場で何度も確かめてきたのは、緊張したままでも、具体的な出来事さえ話せれば読み手に人柄が伝わる記事になるということです。
本記事では、緊張が生まれる理由から、受ける前の準備、当日の答え方、発言が記事になるまでの流れまで、インタビュー記事を作る側の視点で順を追ってお伝えします。聞き手を任された方に向けた準備も取り上げます。
インタビューで緊張する3つの理由
インタビューで緊張する理由は、主に3つに分かれます。理由ごとに効く準備を並べると、次の表のとおりです。
| 緊張の理由 | 効く準備 |
|---|---|
| うまく話そうとする気負い | 話したい出来事をメモしておく |
| 質問が読めない不安 | 質問項目を事前にもらう |
| 録音やカメラへの意識 | 録音の使い道と原稿確認の有無を聞いておく |
うまく話そうとする気負い
緊張のいちばんの理由は、うまく話そうとする気負いです。筋の通った答えを一度で言わなければと考えるほど、頭の中で言葉を選び直し、口が重くなっていきます。
生放送でなければ、話した言葉は記事にする段階で整えられます。受ける側に求められているのは完成した文章ではなく、記事の材料になる出来事だと考えてよいでしょう。
質問が読めない不安
何を聞かれるか分からないことも、緊張を強める理由です。答えを考える時間が無いまま質問を受けると、黙ってしまったらどうしようという焦りが先に立ちます。
とりわけ言葉に詰まりやすいのが、入社の理由や仕事でつまずいた経験のように、気持ちを問われる質問です。気持ちを聞かれた瞬間に、正解の答えを探し始めてしまうためだと見ています。
録音やカメラへの意識
ICレコーダーやカメラを向けられると、一言一句が残る気がして緊張が強まります。言い間違えた部分まで使われるのではと心配になり、慎重になるほど話し方が硬くなるのです。
動画インタビューでは映像がそのまま使われるものの、言い直した部分は編集で切り取れます。録音だけの取材では、ポッドキャストのように音声を公開する企画でないかぎり、録音は書き手が聞き漏らしを防ぐための記録にとどまります。
インタビューを受ける前の準備
インタビューを受ける前の準備は、質問項目の共有、出来事のメモ、話せない話題の線引きの3つで足ります。前日までに30分ほどあれば終えられる作業です。
質問項目の事前共有
インタビューの依頼を受けたら、質問項目を事前に送ってほしいと依頼元に伝えます。採用サイトや社内報、社史のインタビューであれば、頼めば共有してもらえることが多いと見ています。ただし、聞くテーマだけを伝え、質問は当日に出す聞き手もいます。新聞やテレビなど報道機関の取材では、すべての質問を事前に知らせてもらえるとは限りません。
質問項目が届いても、全部に答えを用意する必要はありません。話せそうな質問と詰まりそうな質問に印を付け、詰まりそうな質問の分だけ、出来事のメモで材料を探しておけば十分です。
話したい出来事のメモ
メモに書くのは答えの文章ではなく、話したい出来事の要点です。質問ごとに思い出せる出来事を1つずつ選び、次の3点を書き出します。
- いつ頃の話か
- 何が起きて、自分は何をしたか
- そのとき何を感じたか
3点のうち、受ける側が省きがちなのが、そのとき何を感じたかです。起きたことだけを並べると経歴の説明で終わってしまい、読み手が人柄をつかめません。
話せない話題の線引き
取引先の名前や社内の数字など、記事に載せられない話題は、インタビューの前に聞き手へ伝えておきます。緊張しているときほど、話しながら載せてよいかを判断するのは難しいためです。
線引きを先に共有しておけば、うっかり話してしまっても、原稿の段階で削ってもらえます。ただし、公開前に原稿を確認できない取材では話した内容がそのまま使われることがあるため、載せられない話題には触れないようにしましょう。録音や映像をどこまで公開するかも、あわせて依頼元に聞いておきます。
インタビュー当日の答え方のコツ
インタビュー当日の答え方のコツは、沈黙を怖がらないことと、言い間違いをその場で直すことの2つです。
沈黙を怖がらない答え方
答えがすぐ浮かばないときは、黙って考えてかまいません。数秒の沈黙は、聞き手にとって相手が真剣に考えている合図に見えます。黙ったままが気まずいときは、考える時間をもらう一言を挟みましょう。
言葉に詰まったときに使える一言を、場面ごとに3つ並べます。
| 場面 | 使える一言 |
|---|---|
| 答えが浮かばない | 少し考えてもいいですか |
| 質問の意図がつかめない | たとえばどんな場面のことでしょうか |
| 話がまとまらない | 順番がばらばらになりますが、話してもいいですか |
答えるときに、結論から話す必要はありません。**結論を整えるより、思い出した順に出来事を話すほうが、記事の材料は多く残ります。**聞き手は、まとまっていない話から要点を拾う前提で質問しているからです。
言い間違いの直し方
言い間違いに気づいたら、その場で言い直せば足ります。録音されていても、書き手は言い直した後の内容を記事に使うため、言い間違えた部分が載ることはまずありません。ただし生放送では、言い間違えた部分もそのまま流れます。
テレビの街頭インタビューも、どの発言を使うかは放送局が決めるため、言い直した後の発言が選ばれるとは限りません。バラエティ番組では、撮影時に書く出演承諾書に顔出しの可否などの条件を書き込めます。
インタビューの途中で気づいた場合は、最後に「先ほどの話は、正しくは〜です」と伝えましょう。インタビューが終わってから気づいたときも、依頼元の担当者に連絡すれば、原稿を書く段階で直してもらえます。
発言が記事になるまでの流れ
話した言葉が記事になるまでには、録音から公開まで4つの工程があります。工程を知っておくと、インタビュー中に完璧な答えを目指さなくてよい理由がわかります。
- 録音を文字に起こし、話した内容をすべて書き出す
- 記事の構成を決め、使う話と使わない話を選ぶ
- 話し言葉を読みやすく整え、話した順番を組み替える
- 話した本人が原稿を確認し、事実の誤りや載せたくない表現を直す
書き手が使う話を選び、順番を組み替えるため、話す順番が前後しても、同じ話を2回しても、記事の仕上がりには響きません。書き手が困るのは、話がまとまらないことより、出来事が出てこないことです。「仕事を頑張りました」で終わる答えは組み替えようがありません。「新人の頃、初めて任された案件で納期を2日遅らせてしまった」という一言があれば、そこから一つの段落が書けます。
受ける側が知っておきたいのが、公開前の原稿確認です。採用サイトや社史のように自社が依頼して作る記事では、公開前に原稿を確認する機会が設けられます。新聞やテレビ、雑誌など記者が書く取材では、原稿を事前に見せない方針の媒体が多く、確認できない前提で話すほうが安全です。確認できるかどうかは、取材を受ける前に依頼元へ聞けば分かります。
聞き手側の緊張をほぐす準備
社内報や採用サイトの記事で聞き手を任された場合も、緊張を和らげるのは事前の準備です。聞き手が落ち着かないと相手にも緊張が移り、答えが短くなりやすいと感じています。
前日までに整えておきたい準備は、次の4つです。
- 相手の経歴や担当業務を調べ、聞きたい出来事に見当をつける
- 質問は予定時間に対して多めに用意し、事前に相手へ送る
- 録音が止まったときに備えて録音機器を2台用意し、録音することを冒頭で相手に伝える
- 本題の前に、相手が答えやすい仕事の近況から話を始める
当日は、相づちと問いかけをゆっくりにするだけでも、相手の話すペースが落ち着きます。聞き手の口調が速いと、相手は早く答えなければと焦るためです。
社員が同じ会社の社員に聞くと、遠慮から話が当たり障りのない内容で止まることがあります。字遊堂では、採用サイトや社史の取材で外部の聞き手として質問項目づくりから原稿までを担っており、社内で聞き手を立てにくいときに任せられます。
インタビューの緊張に関するよくある質問
インタビューの緊張について受ける側から出やすいのは、回答の読み上げ、話の脱線、オンライン取材についての疑問です。
回答を原稿にして読み上げてもよいか
回答を原稿にして読み上げるのは、おすすめしません。読み上げた答えは文として整っていても書き言葉の硬さが残り、その人らしい言い回しが記事から消えてしまいます。準備は出来事の要点を書いたメモまでに留め、売上や年号のように正確さが要る数字だけは、メモを見ながら答えてかまいません。
話が脱線したら失敗か
話が脱線しても、インタビューは失敗になりません。脱線した先で出てきた出来事が、記事の中心になることもあります。本題に戻す役目は聞き手が担うため、受ける側が話の筋を気にする必要はないのです。
オンライン取材でも準備は同じか
オンライン取材でも、準備の中身は対面と同じです。加えて、通信や音声の不調は緊張を強めるため、当日の30分前までに次の3点を確かめておきましょう。
- 使う会議ツールにログインでき、音声が聞き手に届くか
- カメラが目線の高さにあるか
- パソコンの通知を切ってあるか
まとめ|上手な答えより出来事を渡す受け方
インタビューの緊張は、うまく話そうとする気負いから強まります。生放送でないかぎり、話した言葉は書き手が組み替えて記事に仕上げるため、受ける側が用意するのは完成した答えではなく出来事です。
前日までにしておくことは、次の3つです。
- 質問項目か聞かれるテーマを依頼元から事前にもらう
- 質問ごとに話したい出来事をメモする
- 載せられない話題を伝え、原稿確認の有無と録音の公開範囲を確かめる
字遊堂は、採用サイトや社史の制作で、緊張しながら話してくださった方々の言葉を記事にしてきました。社員インタビューを企画していて、話し手の負担や聞き手の確保が気になっているなら、質問項目づくりの段階から字遊堂にご相談ください。話し手の方には事前に質問項目をお送りし、当日は出来事を一つずつ引き出す聞き方で進めます。

