公開日 2026年10月01日
「インタビューなら、とりあえず1時間押さえておけば大丈夫」。社内の会議や打ち合わせが1時間単位で組まれることが多く、取材の依頼もその枠に合わせて出されやすいためです。
しかし、字遊堂はこれまで企業や専門家への取材を数多く重ね、Web記事から社史までさまざまな原稿に仕上げてきました。取材を重ねるほどはっきりしてきたのは、時間の長さを決める材料は時計ではなく、仕上がりの原稿にあるということです。1時間が正解の取材もあれば、30分で足りる取材も、2回に分けたほうがよい取材もあります。
本記事では、用途別の時間の目安から、1時間で用意する質問数、当日の時間配分、時間内に終えるための準備まで、取材記事を作る側の視点で順を追ってお伝えします。
インタビューの時間は30分から1時間が目安になる
一般的なインタビューの時間は、30分から1時間に収まるケースが大半です。相手が経営者や医師など多忙な方であれば、30分でお願いすることも珍しくありません。一方で、書籍や社史のように人生や会社の歩みを丸ごと聞く取材では、1回2時間前後を複数回に分けて行うこともあります。
用途ごとの目安を整理すると、次のようになります。
| 取材の用途 | 時間の目安 | 時間を左右する要素 |
|---|---|---|
| コメント取材・街頭インタビュー | 数分〜15分 | 聞く論点が1つに絞られているか |
| 導入事例・採用インタビュー | 20分〜1時間 | 登場人物の数、聞くエピソードの数 |
| Webメディアの取材記事 | 45分〜1時間 | 原稿の文字数、テーマの専門性 |
| 書籍・社史・ロングインタビュー | 1回1〜2時間を複数回 | 扱う年数、話題の広がり |
| 卒論や研究の聞き取り | 1時間〜1時間半 | 質問項目の数、回答の深さ |
ここで見落とされがちなのが、同じ導入事例でも、話し手が1人か3人かで必要な時間がまるで変わる点です。登場人物が増えれば、1人あたりに聞ける時間はその分だけ短くなるでしょう。表の数字はあくまで出発点と考え、次の章で説明する「原稿からの逆算」で調整するのが確実です。
インタビューの時間は原稿の文字数から逆算する
取材の時間を決めるとき、いちばん頼りになる物差しは、最終的に書き上げる原稿の文字数です。取材で聞いた内容は、そのまま記事になるわけではありません。録音した会話のうち、どれだけが原稿に残るのかを知っておくと、必要な時間は自然に見えてきます。
1時間の録音は1万5000字前後の文字起こしになる
人前で話すときの聞きやすい速さは1分あたり300字ほどといわれ、普段の会話はそれより速くなります。質問や相づち、考え込む間を差し引くと、1時間のインタビューを文字起こししたテキストは、1万2000〜1万8000字ほどになるのが実務上の感覚です。早口の方や、話題が次々に広がる方であれば、2万字を超えることもあるでしょう。
つまり、5000字の記事に対して1時間の取材をすると、手元には原稿の3倍前後の素材が集まる計算になります。
記事に残るのは話した内容の3割ほどにとどまる
文字起こしのすべてが原稿に使えるわけではありません。雑談や前置き、同じ話の繰り返し、記事のテーマから外れた脱線を除くと、実際に記事の材料になるのは全体の3割ほどと見ています。話し言葉を書き言葉に整える段階で、文字数はさらに縮みます。
裏を返せば、文字起こしの量が原稿の3倍に満たない取材では、書き手が足りない部分を推測で埋めることになりかねません。取材時間は「話を聞く長さ」ではなく「原稿に必要な素材の量」で決めるものです。
原稿の文字数別に取材時間を決める
ここまでの考え方を、原稿の文字数ごとの取材時間に落とし込むと、次の表のようになります。
| 原稿の文字数 | 取材時間の目安 | 想定される記事 |
|---|---|---|
| 2000〜3000字 | 30〜45分 | コメント中心の短い記事、社員紹介 |
| 4000〜6000字 | 45分〜1時間 | 導入事例、一般的な取材記事 |
| 7000〜1万字 | 1時間〜1時間半 | 対談、専門性の高い解説記事 |
| 1万字を超える | 複数回に分ける | 書籍、社史、連載 |
話し手が2人以上の対談や座談会では、話し手1人あたりの時間を確保できるよう、表より長めに見込んでおくのが無難です。反対に、事前アンケートで経歴や数字などの基本情報を集めておけば、当日はエピソードの深掘りだけに時間を使えるため、表より短く収まる場合もあります。取材記事の制作に携わってきた立場からも、原稿の文字数と構成案を先に固め、そこから時間を割り出して依頼を出す進め方をおすすめします。
インタビューが1時間なら質問は7〜10個に絞る
1時間のインタビューで用意するメインの質問は、7〜10個が目安です。1つの質問に対して答えを聞き、さらに「それはなぜですか」と掘り下げるまでに、5分前後かかるためです。導入と締めの時間を差し引くと、本題に使えるのは40〜45分になり、そこに収まる数はおのずと限られてきます。10個という上限は、数字の確認のように短く答えてもらえる質問を混ぜた場合の数と考えましょう。
取材時間ごとの質問数は、次のくらいを基準にするとよいでしょう。
| 取材時間 | メインの質問数の目安 |
|---|---|
| 30分 | 4〜5個 |
| 45分 | 5〜7個 |
| 1時間 | 7〜10個 |
| 1時間半 | 10〜13個 |
ここで気をつけたいのは、質問を多めに用意すること自体は悪くない、という点です。問題になるのは、用意した質問をすべて聞き切ろうとして、1つあたりの掘り下げが浅くなることでしょう。質問リストには優先順位をつけ、「最低限これだけは聞く」という3〜4問を先に決めておけば、時間が押しても記事の柱になる話は残ります。
インタビューの時間配分は3つのパートで組む
1時間のインタビューは、導入・本題・締めの3つのパートに分けて考えると、配分を組み立てやすくなります。目安は次のとおりです。
| パート | 時間の目安 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 導入 | 5〜10分 | あいさつ、媒体と記事の説明、雑談 |
| 本題 | 40〜45分 | メインの質問と深掘り |
| 締め | 5〜10分 | 聞き漏らしの確認、補足、今後の流れの共有 |
導入の5〜10分で話しやすい空気をつくる
最初の数分は、相手の緊張をほぐすための時間です。媒体の読者層や記事の狙いを短く伝え、写真撮影の有無や原稿確認の流れを共有しておくと、相手は安心して話し始められるでしょう。雑談を長引かせると本題の時間を圧迫するため、10分を超えないように区切るのが無難です。
本題には全体の7割を充てる
本題の40〜45分が、記事の中身を決める時間になります。用意した質問を順番どおりに消化するより、相手の答えのなかで気になった言葉を拾い、「たとえばどんな場面でしたか」と具体的なエピソードを引き出したほうが、原稿に使える素材は増えるのです。時計は相手から見えにくい位置に置き、残り時間を横目で確認しながら進めましょう。
最後の10分で確認と補足を聞く
締めの時間には、聞き漏らした質問がないかを確認し、「ほかに伝えておきたいことはありますか」と相手に投げかけます。この一問から、記事の核になる話が出てくることもあります。最後に、原稿の確認方法や公開までのスケジュールを伝えて終えると、取材後のやり取りで行き違いが起きにくくなるはずです。
インタビューは長すぎても原稿が薄くなる
「時間をたっぷり取れば、そのぶん良い記事になる」と考える人もいるでしょう。ところが、取材を重ねてきた立場から見ると、必要以上に長い取材は、かえって原稿の焦点をぼやけさせる原因になります。長時間の取材で起こりやすいことは、次の3つです。
- 話題が広がりすぎて、記事のテーマから外れたエピソードが増える
- 相手の集中力が落ち、後半の回答が短く、浅くなる
- 文字起こしの量が膨らみ、どの話を残すかの取捨選択に迷う
1時間を超える取材が必要なときは、1回を延ばすより、テーマごとに2回に分けたほうが、それぞれの回で聞く論点がはっきりします。取材の長さは、原稿に必要な素材を集めきれる最短の時間を狙うのが基本です。ただし、関係づくりそのものが目的の初回取材では、雑談に時間を割くことが次回以降の取材を進めやすくする場合もあります。
インタビューの時間を守る鍵は事前準備にある
約束した時間内に取材を終えられるかどうかは、当日の進行より、前日までの準備でほぼ決まります。時間に関わる準備のうち、特に効くのは次の3つです。
質問項目は前もって相手に送る
質問項目を事前に共有しておくと、相手は話す内容を整理した状態で取材に臨めます。数字や時期を確かめる質問も、事前に伝えておけば、当日に資料を探す時間がかかりません。一方で、読み上げ原稿のように答えを準備されると、話が硬くなることもあるでしょう。送るのは主な質問の項目までにとどめ、「当日は話の流れで順番が前後します」と一言添えておくと安心です。
| 事前に送るもの | 送らなくてよいもの |
|---|---|
| 記事のテーマと掲載先 | 深掘りのための追加質問 |
| 主な質問の項目 | 想定している回答の例 |
| 所要時間と録音の有無 | 原稿の細かい構成 |
録音して聞くことに集中する
相手の了承が得られれば、録音しておきましょう。メモを取ることに気を取られると、相手の答えを掘り下げる余裕がなくなり、結果として時間ばかりが過ぎていきます。録音を任せておけば、メモはキーワードと「あとで深掘りしたい言葉」だけで十分です。念のため、ICレコーダーとスマートフォンの2台で録っておくと、機材トラブルで取材が無駄になる事態を防げます。
延長は約束の時間内に確かめる
話が盛り上がり、予定の時間を超えそうになることもあります。その場合は、終了時刻を過ぎてから切り出すのではなく、終わる5〜10分前の時点で「あと10分ほど延ばしても大丈夫でしょうか」と相手に確かめるのが礼儀です。**延長の相談は、断られても困らない段取りを整えてから切り出しましょう。**残りの質問を優先度の高い順に並べ替えておけば、延長できなかった場合も記事に欠かせない話だけは聞き切れます。
インタビューの時間でよくある疑問に答える
インタビューが30分しか取れないときはどうすればいいですか?
30分でも記事は作れます。事前に基本情報をメールやアンケートで集めておき、当日はエピソードや考えの背景など、直接聞かないとわからない質問だけに絞りましょう。メインの質問は4〜5個までと考えておけば、深掘りの時間を確保できます。
オンラインのインタビューは対面と同じ時間でよいですか?
同じ時間でも問題ありません。ただし、オンラインでは接続の確認や音声の不具合への対応に数分を取られやすく、画面越しの会話は対面より疲れやすいと感じる人も多いはずです。1時間の枠なら、本題は対面より5分ほど短めに見込んでおくと安心でしょう。
卒論のインタビューは何分くらいが適切ですか?
1時間前後が目安です。研究の聞き取りでは同じ質問を複数の人に聞いて比べることが多いため、相手ごとに時間がばらつかないよう、質問項目と所要時間を事前に決めておくとよいでしょう。依頼の段階で「1時間ほど」と所要時間を伝えておくと、相手も予定を組みやすくなります。
まとめ|インタビューの時間は原稿から逆算して決める
インタビューの時間は、30分から1時間が一般的な目安です。ただ、本当に決め手になるのは時計ではなく、書き上げる原稿の文字数と、そこに必要な素材の量にあります。1時間の取材ならメインの質問は7〜10個、配分は導入・本題・締めの3つに分けると、時間内に聞くべきことを聞き切れるでしょう。
- 原稿の文字数から、必要な取材時間を逆算する
- 質問には優先順位をつけ、最低限聞く3〜4問を先に決める
- 1時間を超えるなら、1回を延ばすより2回に分ける
取材時間の設計は、原稿の完成形を決めるところから始まります。字遊堂はこれまで、インタビュー記事や採用コンテンツ、社史の制作で数多くの取材を担当し、質問の設計から原稿の仕上げまでを一貫して手がけてきました。「録音はあるのに記事にまとまらない」「何分で何を聞けばいいのか決められない」という段階であれば、原稿の文字数に合わせた質問リストづくりと取材の進行から、字遊堂がお引き受けします。

