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電子書籍の費用は何で決まるのか|制作会社が教える相場と抑え方

公開日 2026年09月14日

書籍のイメージ

「電子書籍なら、無料で出せるんですよね」。出版を受け付ける画面には料金の案内が見当たらず、登録の手順だけが並んでいるため、お金はかからないものとして受け取った方もいるでしょう。

しかし、原稿づくりから電子書籍の制作まで引き受けてきた字遊堂の立場から言えるのは、電子書籍の費用とは出版の手続き代ではなく、自分でやらない工程を誰かに任せる金額だ、ということです。すべてを自分で抱えれば0円で出せますし、すべてを任せれば数十万円を超えます。同じ1冊の本でも、見積もりがこれほど開くのはそのためです。

本記事では、費用が発生する工程の内訳から依頼範囲ごとの相場、見積もりが大きく動く理由、そして費用の抑え方まで、制作を請け負う側の視点で順を追ってお伝えします。

電子書籍の費用はプラットフォームではなく制作工程に発生する

電子書籍を出すと決めたとき、多くの方が最初に開くのはAmazonのKDPの画面でしょう。そこに利用料の案内はありません。アカウントの作成も、原稿の登録も、販売ページの公開も無料で進みます。楽天KoboやApple Booksといった他のストアも、本を並べる行為そのものに参加料を取る形にはなっていないのです。

では、世の中で語られている電子書籍の費用は何を指しているのか。原稿を読者が読める本に仕上げるまでの作業費と、売れたときにストア側が差し引く分。この2つに分かれます。

料金が発生しない部分 料金が発生する部分
出版登録と審査、販売ページの公開 企画、執筆、編集、表紙、データ制作
書籍データの保管と配信の仕組み 売れたときのロイヤリティの差引と配信コスト

この2つを分けて考えると、金額の前に含まれる作業範囲を確かめる必要が出てきます。同じ「電子書籍制作一式」という項目でも、原稿の執筆が入っているかどうかで総額は何倍にも開くからです。

電子書籍の費用は6つの工程に分かれる

制作会社によって呼び名は違っても、原稿が本になるまでにやることはおおむね共通しています。電子書籍の費用は、この6つの工程のうちどれを人に任せるかで決まります。

工程 外注したときの目安
企画と構成 3万〜10万円
原稿の執筆 10万〜100万円
編集と校正 3万〜10万円
表紙デザイン 5000円〜10万円
電子書籍データの制作 5000円〜10万円
出版登録と販売設定 1万〜5万円

金額はページ数、図版の量、取材の有無で動きますので、実務でよく見るレンジとして受け取ってください。

企画と構成は本全体の骨組みを決める

誰に向けて、何を伝え、どの順番で読ませるか。目次の形になるまで組み立てる作業です。ここが決まらないまま書き始めると、書き上げてから章ごと入れ替える事態になり、結果として執筆の時間が倍近くかかります。単体で見れば金額の小さい工程ですが、後ろの工程の費用を左右する位置にあると見ています。

原稿の執筆が費用の大半を占める

6つの工程のうち、もっとも金額が動くのがここです。自分で書けば0円、ライターに任せれば文字数と取材の有無で大きく変わります。すでにある文章を整えるだけなら文字単価1円から3円ほどで収まりますが、聞き取りから書き起こすブックライティングは文字単価10円から15円が目安です。6万字の本を取材から任せれば、執筆だけで100万円近くになる場合もあります。

編集と校正は読みやすさと信頼を左右する

誤字脱字の修正だけを指す言葉ではありません。重複した説明を削り、飛んでいる論理をつなぎ、読者が引っかかる箇所を直す作業まで含みます。電子書籍はレビュー欄が読者の目に触れやすく、誤字の指摘がそのまま評価として残ります。だからこそ、原稿を自分で書いた方ほど、この工程だけは外から目を入れる価値があるでしょう。

表紙は書店の棚がない分だけ売上に直結する

紙の本と違い、電子書籍の読者が最初に見るのは小さなサムネイル画像です。タイトルが読めるか、内容が想像できるか、その一瞬で判断されます。写真素材と文字の配置だけの簡素なものなら5000円ほどから、イラストを描き起こすなら数万円からというのが目安でしょう。サムネイルの見え方は購入の判断に直結しますので、予算の配分では優先度の高い投資先だと考えています。

データの制作は表示の崩れを防ぐために要る

WordやテキストのファイルをそのままKDPに登録することもできます。ただ、見出しの階層、目次からの移動、画像の位置、表の折り返しといった部分は、端末の画面サイズが変わるたびに崩れてしまうのです。文字だけの本をEPUBと呼ばれる形式に変換するだけなら数千円から数万円で済みますが、図版や表が多い本、写真集のようにレイアウトを固定する本になると、組み方の手間がそのまま金額に乗ってきます。

出版登録は難しくないが手間だけはかかる

書籍情報の入力、カテゴリーとキーワードの設定、価格の決定、税務情報の登録。ひとつひとつは画面の指示どおりに進められる作業で、技術的な難所はありません。代行を頼めば数万円ですが、時間さえ取れるなら自分でやってよい工程だと考えています。一度経験すれば、2冊目からは半日ほどで終わります。

電子書籍の費用相場は依頼範囲で3通りに分かれる

工程の内訳が分かると、相場が一つの数字で語れない理由も見えてきます。電子書籍の費用は、依頼の範囲によって0円、十万円台、数十万円以上の3つの層に分かれます。

依頼範囲 総額の目安 向いている人
すべて自分で進める 0円 書く時間があり、まず1冊出してみたい人
一部の工程だけ任せる 5万〜30万円 原稿は書けるが、表紙やデータ制作に不安がある人
企画から出版まで任せる 30万〜100万円台 事業の信頼づくりに使う本を、確実に形にしたい人

同じ層の中で金額が動くのは、ページ数、図版の量、取材の回数、修正に応じる回数といった条件によるものです。見積もりを比べるときは、総額ではなくこの条件をそろえて並べてください。

すべて自分でやる場合は時間で支払うことになる

執筆も表紙も登録も自分でこなせば、現金の支出はゼロで済みます。ただし無料という言葉は正確ではありません。原稿に数十時間、表紙作成に数時間、慣れない登録作業に半日と、自分の時間で支払っている形になります。本業の時給に換算すると、その数十時間分が外注費を上回る場合もあります。

一部だけ外注すると費用と品質の釣り合いが取りやすい

もっとも選ばれているのがこの形です。書ける人は原稿を自分で用意し、表紙とデータ制作だけを外に出す。あるいは原稿に自信がない人が、執筆は自分でやりつつ編集だけ依頼する。読者の目に触れる部分と、崩れると読めなくなる部分に絞って投資すると、十万円台に収まりながら見た目は市販の本に近づきます。

企業が出す場合は企画から任せる形が現実的になる

社長の考えや自社のノウハウを本にする場合、書き手は忙しく、原稿が上がってこないまま企画が止まりがちです。取材で話を引き出して原稿に起こすところから任せれば、著者の負担は数時間の打ち合わせだけで済みます。金額は上がりますが、出版までの期間が読める点は、事業に組み込むうえで大きな違いになるはずです。

電子書籍の出版までの流れを知ると費用の発生地点が分かる

工程と相場の話を、実際に進む順番に並べ直します。出版の手続きそのものは、次の4段階で終わります。

  1. 原稿を用意する。構成を決めて本文を書き上げ、読み直して整える段階にあたる
  2. 表紙の画像と、端末で読める書籍データを準備する
  3. KDPなどの管理画面で書籍情報を登録する。タイトル、著者名、紹介文、カテゴリー、キーワードを入れる
  4. 価格とロイヤリティの条件を決めて公開を申請する。審査を通れば販売が始まる

お金が動くのは1と2だけです。自分で進めるかぎり、3と4に料金は発生しません。ここを知らないまま一式で依頼すると、自分でもできる作業まで含めて支払うことになります。

期間の感覚もつかんでおきましょう。公開を申請してからの審査は通常72時間以内に終わりますので、原稿さえ手元にあれば、表紙とデータの準備から販売開始までは2週間ほどで進みます。一方、原稿を一から書く場合は1か月から3か月ほど見ておくのが現実的です。費用と同じく、時間の大半も原稿づくりに吸われると考えてください。

電子書籍と紙の自費出版では費用の構造がまったく違う

紙の自費出版で数百万円という金額を見て、電子書籍もそれに近いのだろうと身構える方がいます。ここは安心してください。紙の費用の多くは印刷、製本、在庫の保管、書店への流通にかかるもので、部数を増やすほど膨らむ性質を持っています。

電子書籍にはその部分がありません。1冊売れても1万冊売れても、制作にかかった費用は変わらないのです。

比べる点 紙の自費出版 電子書籍
初期費用 数十万円から数百万円 0円から数十万円
制作費と部数 刷る部数に比例して増える 部数では変わらない
在庫と絶版 保管と売れ残りの負担がある 在庫を持たない
出版後の修正 従来の方法では刷り直しが必要になる データを差し替えられる

なお、紙でも注文のたびに印刷するオンデマンド出版なら在庫を持たずに修正もできますし、電子書籍でも売れるたびに配信コストが差し引かれます。両者の境目は以前ほどはっきりしていません。

ただし、費用が軽いことと売れることは別の話です。書店の平台で偶然手に取られる機会はなく、読者に届けるには自分で知らせる必要が出てきます。贈り物にしにくい点や、装丁の存在感を使えない点も、紙にはない弱みでしょう。費用の軽さは、宣伝の手間を自分で引き受ける前提とセットだと考えておいてください。

電子書籍は出版した後もロイヤリティから差し引かれる

制作費だけを見て計画を立てると、手元に入る金額を読み違えます。本が売れたとき、設定した価格の全額が入るわけではないからです。

KDPの場合、著者が受け取る割合は35パーセントと70パーセントのどちらかを選ぶ形になっています。日本のストアでは、70パーセントを選べる価格帯は250円から1650円まで、35パーセントなら99円から2万円までです。条件から外れた本には35パーセントが適用されるとお考えください。さらに70パーセントを選んだ場合は、ファイルサイズに応じた配信コストもロイヤリティから引かれるため、写真やイラストを多く入れた本ほど手取りは目減りします。

見落とされやすいのが、日本の読者への販売で70パーセントを受け取る条件です。KDPセレクトへの登録が必要になりますが、これはAmazon以外のストアで売らないという約束でもあります。楽天KoboやApple Booksにも並べたいなら、ロイヤリティは35パーセントになると理解しておきましょう。

条件は改定されることがあるため、価格を決める前にKDPの価格設定ページで最新の内容を確認してください。

ここで視点を制作費に戻します。ロイヤリティは消費税を差し引いた本体価格から計算されますので、500円の本なら手元に残るのは300円ほどです。制作に30万円かけたとすれば、回収には1000冊が必要になる計算になります。売上で回収するのか、それとも問い合わせや信頼づくりで回収するのか。この見立てを先に決めておくと、かけてよい費用の上限も自然に決まります。

電子書籍の費用が十倍変わる理由は原稿の完成度にある

同じ企画で相見積もりを取ると、10万円を切る回答と80万円を超える回答が並ぶことがあります。この開きに戸惑う声をよく聞きますが、主な原因はページ数でも会社の規模でもありません。

ページ数は、見積もりの主役ではないのです。

とりわけ費用を押し上げるのは、原稿がまだ頭の中にしかない状態です。原稿の完成度は、おおまかに次の3つの段階に分かれます。

  • 構成が固まり、通して読める文章がすでにある
  • 書きかけの文章やメモ、ブログ記事などの素材が散らばっている
  • 伝えたい中身は頭にあるが、文字にはなっていない

1つ目なら、必要なのは編集と表紙とデータ制作だけで、十万円台に収まります。2つ目は素材を並べ替えて足りない部分を書き足す作業が入り、金額は倍近くになるでしょう。3つ目は取材から始まるため、ライターの稼働日数がそのまま費用になります。見積もりの差は、会社ごとの単価ではなく、渡された原稿がどの段階にあるかで生まれています。

費用を比較した記事ではあまり触れられない部分ですが、ここを理解していれば交渉の余地も見えてきます。話す内容が整理されている人ほど取材の回数は減りますし、章立てだけでも自分で決めておけば企画の工程を圧縮できるからです。安く仕上げる近道は、値引きを頼むことではなく、渡す原稿の段階を一つ上げることだと感じています。

電子書籍の費用を抑えるなら工程ごとに外注の要否を決める

一括で安い会社を探すより、工程を分けて考えたほうが総額は下がります。次の順番で決めてみてください。

  1. 本を出す目的を一つに絞る。売上なのか、見込み客の信頼づくりなのか、自分の記録としてなのか
  2. 目的から逆算して、読者の目に触れる工程を洗い出す。表紙、冒頭の数ページ、目次は影響が大きい部分にあたる
  3. 影響の大きい工程だけを外注に回し、残りは自分の手で進める

この順で整理すると、多くの方は表紙とデータ制作が残ります。表紙は購入の判断に直結し、データ制作は崩れると読了率を落とすためです。反対に、出版登録や価格設定は自分でやっても品質差が出にくく、削りやすい工程になります。

もう一つ、費用を大きく左右するのが修正のやり方です。原稿を渡した後に構成ごと変えると、編集もデータ制作もやり直しになり、追加費用が発生します。書き始める前に目次の段階で相談しておけば、この手戻りは避けられるでしょう。

電子書籍の安い見積もりは追加費用の条件を確かめてから選ぶ

金額の安さだけで決めた結果、最終的な支払いが膨らんだという相談を受けることがあります。見積書を比べるときは、次の項目が書かれているかを確認してください。

  • 修正に応じる回数と、それを超えた場合の料金
  • 原稿の文字数やページ数の上限
  • 完成したEPUBのデータを納品してもらえるかどうか
  • 出版した後に内容を直したい場合の対応
  • 表紙に使った素材を他の販促物にも使ってよいか
  • 出版用のアカウントを誰の名義で作るのか

とくにデータの納品可否とアカウントの名義は見落とされがちです。データを渡してもらえないと、次に別の会社へ頼むとき最初から作り直しになります。安さの理由が作業の効率化にあるのか、含まれる範囲を狭めたことにあるのか。そこを一度確かめておくと、後の追加費用を防げます。

電子書籍の費用でよく寄せられる質問に答える

本当に0円で電子書籍を出せますか

出せます。原稿の執筆から表紙、データ制作、出版登録まですべて自分でこなせば、現金の支出は発生しません。ただし作業には数十時間かかりますので、時間という形で支払っている点は意識しておきましょう。

表紙だけを外注するのは割に合いますか

割に合います。読者が最初に目にする部分であり、数万円の投資で見え方が大きく変わるためです。予算を1か所にしか使えないなら、まず表紙をおすすめします。

文字数が多いほど費用は上がりますか

上がりますが、比例はしません。執筆を依頼する場合は文字数が費用に直結する一方、編集やデータ制作は文字数より図版や表の量に左右されます。文字だけの10万字より、図版の多い3万字のほうが高くつく場合もあるのです。

出版した後に内容を直すとお金がかかりますか

自分で直すなら無料です。修正したデータを登録し直せば、審査を経て差し替えられます。ただし、すでに購入した読者の端末に新しい版が必ず届くとは限りません。制作会社に依頼していた場合は、契約に含まれる範囲を超えると作業費が発生しますので、事前の確認をおすすめします。

会社として出す場合は個人と費用が変わりますか

工程にかかる費用は変わりません。ただ、掲載内容の社内確認や法務のチェック、著者名義の調整といった作業が加わるため、期間は長くなりがちです。その分の社内工数も費用として見込んでおくと計画が崩れません。

まとめ|電子書籍の費用は工程を買う金額として決まる

電子書籍を出すこと自体にお金はかかりません。かかるのは、企画、執筆、編集、表紙、データ制作、出版登録という6つの工程のうち、自分でやらないと決めた部分だけです。相場が0円から100万円台まで開いて見えるのは、この範囲が人によって違うからにほかなりません。

そして見積もりの差を生むのは、会社ごとの単価よりも、手元の原稿がどの段階にあるかでした。文章が通して読める状態なら十万円台、頭の中にあるだけなら取材から始まる。ここを把握したうえで、目的に照らして残す工程を選べば、費用は自分で設計できます。

字遊堂は、取材で話を聞き取って原稿に起こすところから電子書籍の制作を引き受けてきました。原稿がまだ形になっていない段階でも、伝えたい中身と読者像さえ決まっていれば本にできます。手元の素材と目次の案を見せていただければ、どの工程をどこまで任せると金額がどう変わるのか、工程ごとに分けた見積もりの形でお答えします。まず1冊目をどう組み立てるかから、ご相談ください。

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