公開日 2025年10月24日
かつて「働く」といえば、特定の会社や都市に縛られるものでした。
しかし、リモートワークとデジタル技術の発展によって、働く場所も相手も自由に選べる時代になりました。
クリエイターが東京を離れて地方に住みながら、海外クライアントの仕事を受ける――そんな働き方はもう特別ではありません。
一方で、逆の潮流も生まれています。
都市や海外に出た人たちが、再び「ローカル」に戻る動きです。
地元の文化、歴史、人のつながりの中で、地に足をつけて活動するクリエイターが増えています。
いま、私たちは「グローバル化」と「ローカル回帰」という二つの大きな流れの間に立っています。
どちらか一方ではなく、両極を行き来できる柔軟な働き方が、これからの時代を生き抜く鍵になります。
グローバル化がもたらす“可能性”と“プレッシャー”
グローバル化の最大の恩恵は、市場の拡張です。
日本という枠を超えれば、英語圏・アジア圏・中東圏――クリエイティブの需要は無限にあります。
AI翻訳やSNSの発達により、言語の壁は急速に低くなりました。
たとえば、イラストレーターが海外のNFTマーケットに作品を出品したり、ライターが英語記事をAI翻訳で納品したり。
小規模チームでも世界を相手に仕事ができる時代です。
しかし、その自由さの裏で、グローバル市場には強烈な競争も存在します。
世界中の才能が同じ土俵に立つことで、価格競争やスピード勝負が激化します。
AIツールを駆使する海外クリエイターは、圧倒的な効率とスケールで動いている。
つまり、グローバルで戦うには、「言語力」や「技術力」だけでなく、文化理解力・戦略性・ブランド力が求められます。
単なるスキルだけではなく、「あなたの視点」や「日本人としての感性」が武器になるのです。
ローカル回帰がもたらす“価値”と“安心”
一方で、ローカル回帰の流れも加速しています。
都会で疲弊したクリエイターが、地方に移住して新しい働き方を始める例が増えました。
地方創生、移住支援、リモートオフィスなどの政策も後押ししています。
ローカルの魅力は、「関係の深さ」にあります。
グローバルが「広さ」で勝負するなら、ローカルは「濃さ」で勝負する。
地元企業や行政、地域住民との密なつながりが生まれ、人の顔が見える仕事ができるのです。
例えば、地元の老舗企業のリブランディングを手掛けるデザイナー、
地域の祭りを記録して映像作品に仕上げる映像クリエイター、
地元特産品をオンライン販売するマーケターなど。
ローカルの課題をクリエイティブで解決する人々が増えています。
さらに、ローカルには「競争が少ない」「生活コストが低い」「人間関係が温かい」という大きな利点があります。
収入の絶対額は都市より少なくても、心の豊かさや幸福度で上回るケースは珍しくありません。
二極化する働き方の中で、クリエイターはどう生きるか
グローバルかローカルか。
どちらが正解かという議論ではありません。
これからの時代に求められるのは、「どちらにもアクセスできる状態」をつくることです。
例えば――
- 平日は海外クライアント向けにオンラインで仕事をし、週末は地元商店街の販促を支援する。
- 地域の風景や文化を海外に発信し、ローカルを“輸出コンテンツ”として再定義する。
- オンラインで世界とつながりながら、オフラインでは地域の信頼を築く。
このように、グローバルとローカルを行き来する“ハイブリッド型の働き方”こそが、今後のスタンダードになるでしょう。
歴史の視点から見ると
実はこの「二極化」は、近代以前にも存在していました。
江戸時代の商人は、地域に根ざしながらも全国を巡り、情報や商品を広げていました。
明治以降も、地方から東京へ出て成功した人々が、やがて地元に還元して地域を豊かにしました。
つまり、「グローバルに出てローカルに帰る」という流れは、新しいようで実は人間の本能的なサイクルなのです。
テクノロジーによって物理的距離が消えた今、そのサイクルが再び強く意識され始めています。
グローバル×ローカルで価値を最大化する3つの視点
-
“地域発グローバル”の視点を持つ
ローカルの魅力を世界に発信する。
外から見れば「当たり前」が「特別」になる。地方の文化や風景には、世界にない価値がある。 -
“人”を軸にネットワークを築く
SNS時代に最も重要なのは、場所ではなく“つながり”。
世界にファンを持ちつつ、地元で顔の見える関係を築くことが最強の防御になる。 -
“流動的なキャリア”を前提にする
一つの場所、一つの職業に固定される時代は終わりました。
海外→地方→都市→再び地方と、キャリアは螺旋のように循環します。
変化を前提とした働き方こそが、安定を生むのです。
どこで働くかより、どう生きるか
グローバル化とローカル回帰――この二つの潮流は、対立ではなく共存です。
クリエイターが真に自由に生きるためには、「場所に縛られない柔軟性」と「地域に根ざす信頼性」の両方を持つことが必要です。
世界とつながりながら、地元を愛する。
テクノロジーを使いながら、人の温度を忘れない。
この“二軸の生き方”ができる人こそ、これからの時代を最も豊かに生きるクリエイターと言えるでしょう。

