公開日 2025年10月17日
「社史=分厚い冊子」。
このイメージはいまだ根強いものがあります。
しかし、いま多くの企業が選び始めているのは、“デジタル社史”という新しい形です。
かつては「周年記念に作って終わり」だった社史が、
今では「常に更新し続ける経営資産」として再注目されています。
なぜいま“デジタル社史”なのか?
理由は明確です。
変化のスピードが速すぎる時代に、冊子だけでは追いつかないから。
- 数年で事業モデルが変わる
- 組織再編や新規事業が頻発する
- 採用やブランディングの情報がオンライン中心になった
こうした状況では、10年に一度の紙の社史では情報が古くなってしまいます。
デジタル化することで、社史は**“つくって終わり”ではなく、“育てていく”**ものに変わるのです。
デジタル社史の主な形
企業によって形式はさまざまですが、主流は以下の3タイプです。
| タイプ | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| Web社史サイト型 | 公式サイトや特設ページで社史を公開 | 検索・動画・年表・社員インタビューなどを統合可能 |
| 社内ポータル型 | 社員限定で閲覧できるクラウドアーカイブ | 社内研修・理念浸透・ナレッジ共有に最適 |
| ハイブリッド型(冊子+デジタル) | 記念冊子と同時にWeb版やPDF版を制作 | 紙の価値を残しつつ、アップデートが容易 |
つまり、「冊子」か「デジタル」かではなく、
両方を組み合わせて“動く社史”にする時代なのです。
デジタル社史の3つの強み
1. 更新・拡張ができる
紙の社史は、一度発行したら修正が難しい。
しかし、デジタルなら新しいプロジェクトや人事異動、表彰内容を随時追加できます。
社史を「過去の記録」ではなく、「現在進行形の経営日誌」として運用できる。
特に「1年社史」や「周年ごとに更新する社史」に適しています。
2. 動画・音声・写真で“温度”を伝えられる
文字だけでは伝わらない感情を、動画や音声で補えるのがデジタルの強みです。
たとえば――
- 創業者の肉声インタビュー
- 若手社員の仕事紹介動画
- 創業当時と現在の写真比較
これらを組み合わせることで、社史が「見る・聴く・感じる」メディアに進化します。
社員や顧客にとっても、親しみやすく記憶に残るコンテンツになります。
3. “社外への発信”にも使える
デジタル社史は、採用・営業・IR(投資家向け広報)など
多方面で再利用できるのが最大の魅力です。
-
採用サイトで「この会社の歴史」を見せ、共感を得る
-
商談時に「創業以来の信頼」を示すブランディング資料に使う
-
社外パートナーに理念や沿革を伝えるプレゼン素材にする
社史=内向きの記録という時代は終わりました。
いまは“社外へ信頼を伝えるストーリーメディア”です。
実例:デジタル化で生まれた「語り継がれる社史」
あるIT企業では、創業20周年を機にデジタル社史を導入しました。
冊子では伝えきれなかったプロジェクトの変遷や社員の声を、
動画とインタラクティブ年表で公開。
結果、社員の閲覧数は想定の5倍に達し、
「社史を読むのが楽しい」「自分の部署がどんな歴史を持つのか初めて知った」という声が相次ぎました。
また、採用イベントでも「この会社の社史を見て入社を決めた」という学生が現れ、
“採用ブランディングの資産”として社史が機能するようになったのです。
デジタル社史の導入ステップ
デジタル化といっても、最初から大規模なシステムを組む必要はありません。
段階的に進めるのが現実的です。
| ステップ | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 社史データの整理 | 年表・写真・資料をデジタル化(スキャン・テキスト化) | 情報資産を一元管理する |
| コンテンツ化 | 代表インタビュー・エピソード・映像素材を追加 | 「読む」から「感じる」社史へ |
| 公開・共有 | 社内イントラ・専用Webで公開 | 社員・顧客・学生がアクセスできる環境を整備 |
まずは「検索できる社史」から始め、
段階的に「語りたくなる社史」へ育てていくのが理想です。
注意点:デジタル化は「軽くする」ことではない
デジタル社史というと、「コスト削減」「簡略化」と誤解されがちですが、
本質はそこではありません。
むしろ、情報を“軽く見せて深く伝える”ことができるのがデジタルの強みです。
テクノロジーの目的は、会社の想いをより多くの人に届けること。
冊子の代替ではなく、理念を次世代に“響かせる”ための進化と捉えるべきです。
社史を“アップデート可能な文化資産”に
これからの社史は、「残すもの」ではなく「使うもの」。
そして、デジタル化によって「磨き続けられるもの」になります。
紙の社史が“記録”なら、
デジタル社史は“呼吸する記憶”。
変化の早い時代において、会社のアイデンティティを守り続けるには、
柔軟に進化する社史の仕組みが欠かせません。
あなたの会社の物語も、冊子の中に閉じ込めず、
未来の社員・顧客・社会に“アクセス可能な記憶”として残していきましょう。

