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祖父を「経営者」として知らない3代目にこそ必要な“会社の物語”

公開日 2025年09月22日

語り継ぐ老人とそれを熱心にメモする少女

「祖父のことは家族として知っている。だけど、経営者としての祖父はよく知らない。」
事業を継ぐ3代目や候補者から、こうした声をよく耳にします。

祖父がどんな想いで会社を立ち上げ、どんな決断を下してきたのか――。
その背景を知らないままバトンを受け取ることは、まるで地図を持たずに航海するようなものです。
特に、戦後や高度経済成長期に創業した企業では、当時を知る社員がすでに退職していることも多く、創業の物語が社内から消えつつある現実があります。

「なぜこの会社が存在しているのか」という問い

3代目にとって、事業承継は単なる“引き継ぎ”ではありません。
「自分の代でどんな会社をつくるのか」という未来への選択でもあります。
しかし、その判断には会社が何を大切にしてきたのかという“過去からの答え”が必要です。

  • 祖父はなぜそのタイミングで新規事業を始めたのか
  • 社員や取引先との関係をどう築いてきたのか
  • 苦境をどう乗り越えてきたのか

これらを知らないままでは、判断がブレやすくなり、社員の不安を招きます。
創業者や先代の想いを知らずに経営することは、会社の核を知らずに舵取りをするようなものなのです。

社史は“見えないバトン”を目に見える形にする

この不安を解消する最も有効な方法が社史の作成です。
社史は単なる記録ではなく、会社の物語を言語化し、未来へ伝えるツールです。

たとえば、創業当時を知る家族や社員へのインタビュー、古い写真や資料の整理を通じて、以下のことを体系的に整理できます。

  • 祖父が下した経営判断の背景
  • 会社が大切にしてきた理念や価値観
  • 代々受け継がれてきた技術やノウハウ

それを一冊の社史としてまとめることで、“見えないバトン”が目に見える形になるのです。

社史がもたらす3つのメリット

1. 経営判断に迷わない

祖父や先代の意思決定を深く理解することで、3代目は自らの判断に軸を持てます。
「創業の理念に照らせば、この決断は正しいのか」という視点が、経営のぶれを防ぎます。

2. 社員の信頼を得られる

代替わり直後は、社員が「新社長についていけるのか」と不安を抱きやすい時期です。
社史を通じて理念を共有すれば、社員が同じ物語を語れる組織になり、一体感が生まれます。

3. 外部への信頼性向上

取引先や金融機関は「歴史と理念を大切にする会社」に安心感を持ちます。
社史はその信頼を伝える強力な証拠になります。

「作ろう」と思った時が最適なタイミング

社史は「周年記念に作るもの」というイメージがありますが、実際には思い立った時が最適なタイミングです。
なぜなら、創業期を知る人や資料は時間とともに失われていくからです。
一度失われた記憶は二度と取り戻せません。

まずは小さく始めても構いません。
年に一度、会社の歩みをまとめる「記録型社史」なら、無理なく続けられ、将来の大きな財産になります。

物語を知ることは、未来をつくること

祖父を経営者として知らないまま会社を継ぐことは、未来を描くうえで大きな不安要素になります。
社史はその不安を解消し、会社の物語を未来へとつなげる架け橋です。

会社の歴史を語れる人や資料がまだ残っている今こそ、その物語を形にしましょう。
それは3代目にとって、祖父からの見えないバトンを確かに受け取り、次の世代へ渡すための最初の一歩となるはずです。

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