公開日 2024年11月01日

ライターとして活動する上で、読書は必要でしょうか?多くのライターがこの質問に直面し、悩むポイントでもあります。答えは「必須ではないが、役立つ」です。ライティングのスキルを磨くためには、日々の実践や経験が重要ですが、読書にはライティングの質を高めるためのさまざまなメリットがあります。
ただし、ライターにとっての読書は、趣味としての読書とは異なる側面があるのです。本記事では、ライターに読書が必要だと考える理由を解説します。
ライターが読書から得られるメリット
読書は、ライターにとって多くのメリットがあります。特に大きなメリットは以下の3つです。
- 語彙力と表現力の向上
- 新しい知識の獲得
- 思考力や構成力が鍛えられる
ライターにとっての読書は、単なる知識のインプットに留まらず、表現力、構成力、さらには思考力を磨くための貴重なトレーニングです。多角的な視点と豊かな表現力を備えることで、さまざまなテーマに対応し、より読者の心に響くライティングができるようになります。それぞれ詳しく見てみましょう。
語彙力と表現力の向上
読書の最大といっても過言ではないメリットは、語彙力と表現力の向上です。読書によって、多様な言葉や文体に触れると、状況やニュアンスに応じた的確な言葉を選びやすくなります。例えば、ニュース記事では客観的な表現が求められる一方、エッセイでは共感を呼ぶ感情表現が必要です。読書を通じて適切な語彙の引き出しが増えることで、場面に応じたライティングが可能になります。
新しい知識の獲得
2つ目のメリットは、新しい知識の獲得です。ライターが書くテーマは幅広く、時には専門的な分野や新しい話題にも対応する必要があります。読書を習慣にすることで、一般教養やトレンドへの理解が深まり、執筆時に調査が必要なテーマでもスムーズに取りかかれるようになります。また、さまざまな知識を持っていると、執筆内容に厚みが加わり、読み手にとって信頼性の高い記事を書くことができます。
思考力や構成力が鍛えられる
思考力や構成力が鍛えられるのも、ライターが読書をするメリットです。読書をする際には、文章の構成や段落ごとのつながりなど、文章全体の流れにも意識が向きます。自分が文章を書く際も、読み手が自然に流れを追えるような構成がしやすくなります。特に、長文の書籍や論説を読む習慣は、複雑な内容を分かりやすく整理して書くスキルを向上させます。
語彙力や文法力を超えて「行間を読む力」の重要性
ライターにとって、語彙力や文法力の重要性は言うまでもありません。しかし、ライターとしてさらに重視すべきなのが「行間を読む力」です。この力は、文章に書かれていない情報や文脈の裏にある意図を感じ取り、表現に反映する力とも言えます。単なる言葉選び以上に、読者が求めること、心に届くこと、共感できることを伝えるには不可欠な要素です。
「行間を読む力」が発揮されるシーンは、ライティングのあらゆる場面に存在します。例えば、読者が知りたい情報に真っ先に答える文章構成や、話題の論点をあえて曖昧にせずに説明する姿勢などもその一部です。こうした「行間を読む力」は、どのような記事が読者の求めに応えているかを的確に察知し、文章の構成や内容を柔軟に適応させることに繋がります。ライターにとって、単に情報を提示するのではなく、読者の思考や感情に寄り添うことが、読者との信頼関係を築くカギとなるのです。
SNSでの炎上の大半は行間が読めてないからだと思う
また、行間を読む力は取材記事やコラム、SNSでの発信にも活かされます。特に、感情や経験が多く交わされるSNSでは、他者の意図や気持ちを読み取れずに不用意な発言をしてしまうと、時に予期しない批判を受けたり、炎上のリスクを高めたりするかもしれません。ライターとして「行間を読む力」を磨くことで、読み手やフォロワーとのコミュニケーションが円滑になり、誤解を生まないスムーズな交流が可能になります。
この「行間を読む力」は、読書で習得が可能です。特に、物語やエッセイ、他者の考え方や価値観に触れる読書は、文章の行間に含まれる意図や背景を捉えるトレーニングになります。このような経験を積むことで、ただ言葉を並べるだけでなく、表現力豊かなライティングができるようになるでしょう。
現代人は思ったより文章を読めない
デジタル化が進み、SNSやニュース記事など膨大な量の文章に触れる機会が増えた現代ですが、実際には「文章を正確に読み解く力」が十分ではない人が多いという実態が明らかになっています。文部科学省が発表した「全国学力・学習状況調査」やOECD(経済協力開発機構)による「国際成人力調査(PIAAC)」によると、特に日本人の読解力には課題があるとされました。
たとえば、OECDが行ったPIAACの調査では、日本人の成人の約4分の1が複雑な情報を含む文章の内容を正確に理解することが難しいと報告されています。さらに、文部科学省の全国学力調査でも、特に若年層において「文章の内容を正確に読み取り、自分の考えを論理的に表現する力」が低下していることが示されています。これにより、読者が文章の意図や行間を読み解けないために、誤解や浅い理解に留まってしまうケースが増えているのです。
こうした調査結果が示すように、現代人が膨大な情報に触れながらも、その情報を深く理解し正確に読み解く力を持たないことが、情報の誤解や思い込みの温床となるリスクを孕んでいるのです。ライターが読書を通して「行間を読む力」を鍛えることで、読み手の理解度を考慮した構成や表現が可能になり、読者にとってより正確かつ共感を呼ぶ文章を提供できるようになるでしょう。
読書は「売り言葉に買い言葉」を防ぐ手段
SNSの普及によって、誰もが手軽に発信できる時代です。しかし、気軽さゆえに誤解が生まれやすく、「売り言葉に買い言葉」の応酬がトラブルを招くことも少なくありません。このような中でライターに求められるのは、表面的な言葉だけでなく、相手の意図や感情を読み解く「行間を読む力」です。
SNSでは特に、限られた文字数で発言するため、言葉の背景や意図が伝わりづらく受け手が発信者の意図を誤解するケースも多々あります。こうした短絡的なやり取りに巻き込まれないためにも、行間を読む力を備えておくことが重要です。
ライターにとって、読書はこの行間を読む力を鍛える手段として有効です。読書を通じて物語の登場人物や著者の意図を深く理解する経験を積むと、SNSの表現や他者の短いコメントにも意図や背景を想像しやすくなるでしょう。また、さまざまな意見に触れることで、異なる価値観や考え方に柔軟に対応できるようになるのもメリットです。
さらに、ライターとしての発信力も、行間を読む力があることで向上します。感情的な反応ではなく、相手の立場を理解した表現や冷静な視点から発信できるようになれば、SNSでも好印象を持たれるでしょう。ライターにとって、読書はただの趣味ではなく、行間を読む力を養い、SNS上での発信を含むライティング全般に活かすための一つの方法なのです。
まとめ ライターにとって「読書」とは何か?
ライターにとって、読書は決して必須ではありません。しかし、質の高い文章を書くためには大きな助けとなるものです。読書は単に語彙力や文法力を補強するためだけでなく、行間を読み取る力を養う効果的な方法でもあります。特に「行間を読む力」は、読者が何を求めているのか、どんな表現が相応しいのかを敏感に察知し、的確に表現するための重要なスキルです。ライターがただ情報を伝えるだけでなく、読み手の心に響く文章を作り上げるには欠かせない力と言えるでしょう。
また、読書は他者の視点や価値観に触れる貴重な機会でもあります。多様なジャンルやテーマの書籍を通じて異なる考え方や背景を知ることは、視野を広げ、共感力を高めるために非常に有効です。共感力が備わると、SNSなどで短い言葉が飛び交う中でも、誤解を招かずに読者と建設的なやり取りができるようになります。
「ライターとしての読書」は趣味とする必要まではないものの、文章力を磨き、さまざまな場面で適切な対応をするためにやっておいたほうが良いトレーニングとも言えます。ライティングスキルを高め、行間を読む力を培い、さらに豊かな発想力を持つライターとして成長するには重要なことなのです。